自由気ままに 〜山、旅、心〜

山登りの記録や、旅の記録、日常生活の中で感じたことをのほほんと綴るブログ

残雪の大日岳 -1日目-

3泊4日のキャンプ旅行の次の日からは大日岳に登山だ。いやはや、今から考えればきついスケジュールだ。せめて、間に一日休息日を設けるべきだ。

 

5月3日、午前6時前に自宅から集合場所に向かう。昨夜は7時間弱しっかり寝て体調はだいぶ良い。称名道路のゲートが開くのは午前7時。それに合わせて立山町へ車を走らせる。参加人数は8人、車は3台だ。駐車場に車を停め、支度を整える。7時半に駐車場を出発、称名滝手前の大日岳登山口を目指す。

 

当初の予定は、七福園にテントを張り、大日岳と奥大日岳を縦走する2泊3日の山行であった。しかし、天気予報によると、寒冷前線を伴った低気圧の影響で、3日午後から風が強くなり、夜には雨が降り始め、大荒れになるとのことだった。実際、朝の時点で福井では暴風警報が出されていた。稜線まで上がってしまうと風を避けられない。ということで、大日平にテントを張る計画に変更することとなった。

 

登山口に着いたのは午前7時50分。そこからは夏道を利用して登る。雪は全くない。荷物は17kgほどだ。ザックをうまく調節すれば骨盤が重量の大半を支えてくれるためそれほど苦にならない。途中、カタクリ(かたかご)の花が咲いていた。「もののふの 八十乙女らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子の花」とは大伴家持の有名な短歌。今の人も昔の人も美しい花に感動する心は共通なのだ。

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1時間ほどで猿が馬場に到着。小休憩を挟み、さらに20分ほど歩くと牛ノ首。左手にザクロ谷を見ながら、痩せた尾根をしばらく歩く。大日平手前の斜面で残雪があった。残り方がいやらしく、うっかり滑ると谷まで落ちる危険がある。ピッケルを出すほどでもないため、潅木の枝につかまりながら慎重に進む。

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午前9時半過ぎに大日平に出て一服する。ここから大日平山荘まではあと1時間程度と見積もられる。大日平はだだっ広く、下山時にガスに巻かれて視界が効かない場合、道迷いの危険性が高い。そこで、ペナントを頻繁に潅木に結びつけながら進んでいった。現時点では天気もまずまず、風もそれほど強くない。

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午前11時。大日平山荘に到着した。先客たちがテーブルでランチを食べていた。テーブルをひとつ空けてもらい、我々もランチにする。とはいうものの、私は登山時は休憩ごとに2〜300kcalずつ食べるスタイルだ。カロリーメイトとナッツをほおばる。ランチを済ませた後、テント設営場所を探した。風を避けられる場所ということになるが、山荘のすぐ近くは、山荘からの飛来物の可能性があるためNG。山荘の後ろ側には松の木がたくさん生えている場所があったため、そこで探す。テントは2張り。それなりに広い場所が良い。結局、山荘から十数m後ろの木々の間の雪を掘って平らにし、そこにテントを張った。

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テントを張った後は、山荘のテーブルで大宴会だ。びっくりするほど穏やかな天候だ。本当に荒れるのか。まず水を作って明日の行動水を確保する。それからは、日本酒や焼酎、ウイスキーで乾杯する。各自で持ってきたおつまみをつまむ。焼き餃子や焼きウィンナーも登場する。午後3時。風が強くなってきたようだ。 撤収し、テントに入る。

 

午後4時。気象担当の私が、NHKラジオ第2の気象通報を聴いて天気図を作成する。北朝鮮と中国の国境付近にある976hPaの低気圧が東北東に時速30kmで動いているようだ。寒冷前線は九州の西を通っている。とすると、計算上、寒冷前線が北陸を通過するのはまだ24時間以上も先になる。荒れ始めるのは明日の午後からということか。これを受け、明日の行動予定をCLが決めた。明日、天気が崩れないうちに大日岳山頂を踏み、午後には全員揃って下山する、というものだ。

 

行動予定も決まり、夕食の準備に入る。夕食は豪華豚丼だ。豚肉は湯煎の角煮。トッピングとして焼きちくわ、茹で卵、高菜、ラー油和えオクラが入った。うん、美味い。だが、残りのご飯を食べている時に何か苦い味がする。もしかして、ペットボトルに入ったお酒を水と間違えて入れたか。

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それからお酒を飲みつつ、コーヒーを飲んだりお茶を飲んだりしてゆっくり過ごす。午後7時前になって外に出てみると富山平野の夜景が綺麗だ。午後8時。歯磨きしてトイレを済まし、就寝である。思ったほど寒くない。テントの中はむしろ暖かい。ザックの中からシュラフを広げるのも面倒くさい。そこで、シュラフなしで寝てみることにした。ダウンの上下を着た上から濡れ防止のためにカッパの上下を着る。ザックが枕だ。2m×2mの空間に男4人は窮屈だが、これがテント生活。整理整頓を心がければそれなりに快適だ。

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睡眠不足は解消していないので、よく眠れると思っていた。だが、夜中は時折、非常に強い風が吹き、木がうなる。風の音で何度も目を覚ました。それでもテントが風をまともに受けなかったのは不幸中の幸いである。設営場所が良かったのだ。なんとか不安な一夜をやり過ごすことができた。